カルチャーショック カナダでピアノ

[カナダでピアノ]シリーズ、7回目の今日のテーマは「カルチャーショック」


Gariは30代半ばでカナダへ移住した。これまでいろいろカルチャーショックを受けてきたが、ピアノ、音楽関連でもたくさんのカルチャーショックを受けてきた。Gariが驚いたことをまとめてみた。



😲 先生も呼び捨て

北米だから当たり前だけど、ピアノの先生はファーストネームで呼び捨てでOk。


😯 全国統一システム

カナダピアノ界隈はまるで共産主義かと思うくらい、ピアノ教育システムはカナダロイヤル音楽院(Royal Conservatory of Music, 略してRCM) のシステムが牛耳っている。カナダ全国、どこにいても、どのピアノの先生についても、ほとんどみんな(おそらく90%以上の先生たちが)同じRCMの教材、RCMのシラバスに基づいてピアノを習う。ある意味わかりやすいし、先生が変わっても教材は変わらないと言うのは安心かも。


😲 一冊の教本を全曲やると言うアプローチをしない

RCM独自に編集したテキストを使うので、
 - インヴェンションは1〜3曲やればOK
 - シンフォニアも1〜3曲やればOK
 - バイエル、ツェルニーは1曲もやらないかも
 - ソナチネは1〜2曲やればOK


じゃあ、カナダのピアノ学習者たちは何をやっているの?

😯 カナダ人のピアノレッスンバッグは軽い!

持ち運ぶテキストは3冊だけだから。
RCMのテキストは、どのレベルも3冊のテキストを使用している。一冊が薄くて軽い。
写真 ↓ はレベル6(中級)のテキスト3冊セット。

1. Technical Requirements 基礎テクニック
2. Studies/Etudes エチュード
3. Repertoire レパートリー



RCMのカリキュラムで1年間にやるべきこと:

😲 バラエティー豊富なテクニック練習

いちばん初めのレベル1からテクニック練習教材を並行して使っていく。
内容は以下のとおり
 - スケール、アルペジオなど基本テクニック 1日5〜10分程度推奨
 - 初見練習 初見用の練習教材を週に1回、これは通常レッスンの時に5〜10分だけ
 - メロディープレイバック 先生が弾いた短いフレーズを耳で聞いて同じように弾く
  これも週に一度、レッスンの時に5〜10分だけ

😲 1年に約10人の作曲家の作品に取り組む

いわゆる五期練習法。1つのレベルで平均して10曲のピースを弾けるようになる。
 - バロック時代のピースを1年に2〜3曲
 - 古典派のピースを1年に2〜3曲
 - ロマン派のピースを1年に2〜3曲
 - 印象派のピースを1年に1〜3曲
 - 近現代のピースを1年に1〜2曲

基本的に同じ作曲家のピースは避けるので1レベルで約10人の作曲家の作品に取り組むことになる。ざっくりと1年に10曲に取り組むとして、1曲あたり3〜4ヶ月で合格するのが平均的。同時進行で3〜4曲取り組み、1年が終わる頃には10曲合格して次のレベルに上がれるというシステム。1年で10人の作曲家を知るということは、5年続けりゃ50人の作曲家の作品を知るってことよ!レアチャレのレパートリーも増えるわね🤭クスクス


😲 筆記科目も早いうちから

ピアノの試験を受ける生徒は、筆記科目も勉強する(楽典、音楽史、ハーモニー、カウンターポイントなど)。これは試験を受ける気がある人だけ。全員ではありません。


😲 夏の2ヶ月は多くのピアノ先生がお休み

カナダの夏、ほとんど全ての学校(小学校から大学まで)が7〜8月まるまる2ヶ月夏休み。普段できないことをする人たちが多く、家族で旅行へ行ったり、普段とは違うことを習ったり。なので通常ピアノを習っている生徒たちも、夏はピアノから離れている人が多い。夏は宿題さえ出ない。もちろん、熱心な生徒の中には希望して夏もピアノを続ける人もいるが、かなりの少数派。大学で音楽学部へ行く生徒たちでさえ、夏の2ヶ月はピアノを触らない人が多い。


😲 発表会で暗譜はしてもしなくても良い

個人の自由尊重。娘の発表会を約13年にわたって見てきた経験からすると、暗譜で弾いた生徒は全体の30%くらいだった。


😲 発表会の会場は教会が多い


😲 子どもピアノも「趣味だから」

「趣味だから自由にやっていい」というのは、カナダでは大人だけじゃないんですよ〜。子どもの生徒でも、「所詮趣味の範囲だから」と割り切って、各自やりたい範囲でピアノに向き合う人もいる。はじめから将来専門家になるわけじゃないと決めている子どもたちは、取り組み方もそれなりに緩くモディファイしている。


🙄 学校で音楽は選択科目

小学校、中学校、高校で、いわゆる「音楽」は必修科目ではない。音楽を選択しない生徒は一生音符も読めず、有名な作曲家の名前も知らずに大人になれちゃう。

😱 Chopinを「チョピンって何?」と平気で言う人が普通にいる


😮 いわゆる「〇〇音大」という音楽の単科大学は存在しない

その代わり、各地の大きな総合大学には音楽学部が存在する。(東大に音楽学部があるようなイメージ)。


😲 ピアノの先生は大学で音楽を勉強していたとは限らない

ほとんどのピアノの先生はRCMでピアノ教師のライセンスを取っている。大学では音楽以外の学問を勉強した人も多い。


🥳 カナダ人、意外と国際ピアノコンクールで良い成績を収めている

最近の記録では、2021年のショパコンでBruce Liu が第1位、2015年のショパコンではCharles Richard-Hamelinが第2位、Tony Yike Yangが第6位。Jaeden Izik-Dzurko君は、2022年のマリア・カナルスで第1位。人口が少ない国にしては、よく頑張っている。


😲 Glenn Gouldはカナディアン!

ピアノ愛好家の間ではかなりの有名人だが、彼はカナダ人で、若い頃RCMのプログラムで勉強したということはあまり知られていないのでは?


以上思いつく範囲で、カナダにきてびっくりしたことをまとめてみた。

共産主義的なピアノ教育システムの中でも、自由と合理的なアプローチで個人の意志を尊重するという北米文化の良さがハーモニーしているといった感じだろうか。




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コメント

sobako さんの投稿…
GARIさん
やっぱり国によってピアノの練習の仕方が違うんですね。
興味深いです!
そして、グールド!
GARIさんはトロントにあるグールドのベンチには行ったことあります?
私にとっては今一番行ってみたい場所なんですっ!
Gari さんの投稿…
sobako さん、こんにちは。同じ国だけど、トロントは遠いので、まだ一度しか行ったことがないんですよー。当時はまだピアノ始める前のことで、グールドが誰かも知らなかったの。次回行く機会があったら、ベンチ探しにいきます!