芸術家の頭の中には、凡人には想像もつかないような世界が広がっている
二次予選の直前に30分以上にも及ぶ長いトークショーにガジェブさんが出ていた。コンクールの合間で緊迫した時期だろうに、こんなに長いトーク番組の参加を承諾するとは、かなり心に余裕があるに違いない。舞台で見ているだけではわからなかった彼のチャーミングな内面を垣間見ることができてすごくおもしろかった。舞台の上の彼は、渋くて落ち着いたピアニストの雰囲気だけど、話している姿を見ると、陽気でやっぱり26歳の若さあふれるキュートなお人柄という印象を受けた。ガジェブファンの人には是非オススメのトークショー。本当に楽しそうに音楽のトピックスを話していて、インテビュアーはピアニストのBen Laudeさん、ピアニスト同士で音楽の知識が深い人たちだったので、会話がものすごくはずんでた。
いくつか印象に残った言葉を抜粋してメモメモ。芸術家は言葉を持っている。ほんとにカッコいい。以下、ランダムに彼の言葉抜粋してみた。
ショパンコンクールでは他のコンクールと違ってショパンの曲しか弾けない。これは顕微鏡を使ってショパンをじっくり調べているような感じ。(Gariのつぶやき:いきなり顕微鏡ですか!)
In Chopin’s music, the spacetime is deformed very flexible way. Chopin is exploring different geometry.
ショパンの音楽に広がる時空間は非常にフレキシブルに形がゆがんでいる (四角とか三角とかお決まりの形ではなく)、ショパンははおそらくいろいろな幾何学的時空間を楽しんでいた。(Gari:音楽を宇宙物理学とかけてその心は!)
Beauty of undefined
曖昧な、定義づけられていない、枠にはまらない、はっきりとしない美しさ
Music is speech
音楽はスピーチをするようなものだ
Dedication towards each sound
一音一音に気持ちを込める(献身)
全てのピースにはそれぞれに香りがある。二次で弾くバルカローレOp.60にも独特のにおいがある。僕のイメージする舟歌は、ヴェネチアの香り。春、人の少ない早朝に、ショパンは大きくため息をついて、心の中の悲しみを全て吐き出し、ものすごく軽やかな気持ちになる。そんなイメージ。
この動画の後半ではImprovisationについて話が盛り上がっていた。
Improvisation 直訳すると「即興で演奏すること」
ジャズではソリストが与えられた自由枠で、楽譜の無い世界の中でコードのパターンをベースにしてメロディーを即興で演奏すること。
クラシック音楽でもImprovisationが許されているということは、今回のショパンコンクールで、Georgijs Osokins さんの演奏で初めて知りました。現在音大に通っている私の娘に聞くと、たしかにクラシックでもImprovisationは有りなんだそうだ。
このトークショーの中で、ガジェブさんはこう言っている。
“It is impossible not to improvise, … music is too rich, too smelly, lots of fragrance… each time you can do something different”
演奏する時にインプロヴァイズしないなんて不可能だよ。音楽はあまりにリッチだし、たくさんの香りがありすぎて、演奏するたびに違う表現をするのはごく自然に出てくる。
Beyond the technical perfection
(インプロヴァイゼーションをすると) 技術的な完璧さを超越した芸術が生まれる。
つまり教科書どおりに技術的に正確に弾けるということはあまり問題じゃないということ
この言葉、先日紹介したオソキンスさんの言葉でもまさに同じような内容のことを言っていた。
ガジェブさんとオソキンスさん、このお二人に共通するのが、非常にオリジナリティの高い演奏をすること。それはおそらく彼らの豊かなインプロヴァイゼーションの技量ため。そしてこういう弾き方をすると確実に好みは二分すること。コンクールの場ではリスキーな選択、審査員から良い評価が出ない可能性があることを敢えて承知で、ご自身の感じるままに音楽を届けてくれているのだろう。
ガジェブさんは三次進出。是非ファイナルで彼のオリジナリティあふれるコンチェルトを聞いてみたい。
トークショーはこちらのサイトです↓
コメント
ぴあのりこです。
いつもブログとスタディプラス見てくださり、ありがとうございます🎵
先日、きんどーちゃんのブログで勝手にGari さんのブログを紹介してしまいました…スミマセン(^_^;)
オソキンスさんのインタビューが興味深かったので、オソキンス愛溢れるきんどーちゃんに見てもらいたくて、紹介しました。
外国人ピアニストのインタビューは、時間がたたないと翻訳してくれないので、Gari さんのブログは非常に貴重です。
注目の外国人ピアニストも、日本では専門誌でもみないと分からないので、Gari さんのブログが役に立ってます。
今回のGADJIEV のコメントも、興味深かったです。顕微鏡とか(ひょっとして、微生物とか見るのが好きなのかな?)、幾何学的空間とか(物理が得意なのかな?)、音楽ではあまり使わないような表現されてるので、理系が得意な方なのかな?
GADJIEV さんはピースに香りを感じているようですが、私は色を感じます。舟歌はベネチアの夕焼け色、英雄ポロネーズは金色、雨だれは灰色…な感じです。
余計なことをしてしまった…と思いましたが、きんどーちゃんのブログで、コメントのやり取り見て安心しました。
これからもコンクール情報、楽しみにしています\(^_^)/
(追記 インヴェンション4番、分からないところはGariさんの演奏を参考にさせていただいてます。ありがとうございます‼ )