音楽を巡る旅シリーズ〜ペール・ラシェーズ墓地

2015年の夏、パリへ旅行した時のこと。


この日はパリの観光最終日。娘が今回の旅で最も期待していた場所に行く。その場所とは・・・墓地。しかしこのお方、墓地とかカタコンベとか、どうしてそんな不気味なところが好きなんだろう。


目指すはパリ20区にある有名人がたくさん眠っているペール・ラシェーズ墓地だ。彼女がどうしても見たかったのは、他でもない、フレデリック・ショパンのお墓。当時10年間ピアノを続けて来て、RCMレベル10の試験を受けたばかり。課題曲にはもちろんショパンの曲も入っていた。旅行中に、ピアノの先生からメールをいただき、「合格していたわよ!」と嬉しい知らせをいただいたばかり。


この墓地は非常にしっとりとした穏やかな空気が流れていた。都会の喧騒を離れ、墓地にいるというのに不思議なほどにリラックスした落ち着いた気分になれる。広大な敷地内はまるで一つの町のように番地が記され、地図がないと目当てのお墓にはたどり着けない。おそらくものすごい富豪層しかこの墓地を買うことはできないのであろう。一つ一つのお墓はまるで競うように立派な佇まいだった。霊感の強い夫でさえ、この場所では何も恐ろしい気配は感じなかったそうだ。おそらく幸せな生涯を送った人たちの眠る場所にはディメンターは出て来ないのかもしれない。






お墓は団体旅行の観光地にはなっていないせいなのかの、訪れる人もまばらだった。そして、お目当てのショパンのお墓。美しい女性の彫刻がかざられ、ひときわ目だつ。




ふと気がつくと娘が泣いているではないか。「あれ~、何で泣いてるの?」その時私の心にこだましたのは、「私の~お墓の前で~な~か~な~いで~く~だ~さい~わ~た~し~は~ここに~いません~」感動で涙している娘の前で、何たる不謹慎な。しかしこの涙の訳は・・・。


落ち着いてから涙の訳を聞くと、「自分でも分からないけど、自然に涙が出てきた。崇拝していたショパンの身体がここに眠っていると思うと、自分が少しでも彼に近づけた気がして感無量になった。これからも自分の指が彼の曲を奏でるたびに、彼をもっと近くに感じられるだろう。」と言うようなことを言っていた。知らないうちに身体だけじゃなくて、心も成長していたんだな。パリに連れて来てやって良かったと実感した瞬間だった。


この旅行の直後、自宅に戻ってから娘が弾くショパンが一段と美しく歌えるようになったのです。親バカかもしれませんが、明らかに何かが変わった感じがして、ショパンに力を貰えたに違いないと信じてしまいました。




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