影響をくれた人々(2) Lang Lang - Journey of a thousand miles

世界的に有名なピアニストLang Langの自伝。私のクライアントの一人が、プレゼントしてくれた本だ。Lang Langの直筆のサインが入った貴重な一冊。
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どのような練習をしたら世界の頂点に立つピアニストになれるのか。彼は非常に貧しい家庭に生まれた子どもで、ピアノを練習する環境は決してよかったとは言えない。父親が彼の才能を見抜いて、ものすごい厳しさでランランを育てていく。収入源は母親のテレフォンアポインターの給料だけ。父親はランランの専属マネージャーとなり、仕事を辞めてランランの生活を監視する。中国で一番良いピアノの先生に着くため、ランランは父親と二人で北京へ移り住み、母親は遠く離れた田舎町で、少ない給料を仕送りするという厳しい二重生活を強いられる。
ランランは朝5時に起きて2時間練習、学校の昼休みに1時間、学校から帰ってさらに5時間と、一日8時間の練習時間を確保した。本人はそこまでピアノに思い入れがなかったようだが、厳しい父親が過酷な練習を押し付ける。光熱費を払う余裕もなく、まともに食べるものも無いような環境で、彼はピアノに全てのエネルギーを注いでいく。

まだ幼いランランがあるコンテストで二位を受賞したとき、父親はランランをアパートのベランダから突き落とそうとし、お前を殺して自分も死ぬと脅した。一位にならなければ意味がないのだそうだ。

「競争相手に勝つ」ということだけにフォーカスして、父親はライバルの演奏を盗み聴きするなどの努力も欠かさなかった。息苦しいほどの過酷なプレッシャーだ。幼いランランが「勝つ」という執念でピアノに向かいながら、確実にコンペティションで勝ち進んで行く。涙なくしては読めない本だった。ここまで過酷な幼少時代を過ごしてきて頂点に立った彼だが、何か本当に大切なものを犠牲にしていないかと思わざるを得ない。

彼は「忍耐力が物事を学ぶことの鍵である」と言っている。忍耐力を身につけることは非常に難しい。

世界コンクールで頂点に立ったランランはアメリカのカーティス音大から特待生として招かれ、授業料だけでなく、アメリカでの生活費も全て奨学金として提供される素晴らしい大学生活を手に入れることになる。その音大で出会った教授が彼に伝えた言葉が印象的だ。

「君はもう他人と競争することをやめないといけない。「勝たなければいけない」というプレッシャーがなくなれば、今まで感じたことの無い素晴らしい演奏ができるようになる。それは、何か神秘的な力に満ちた不思議な力を持つ演奏だ。」この言葉は私の心にじーんと来た。成功をおさめた人の書く本からは学ぶことが多い。

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